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「技術だけでなく人間力を伸ばしたい」 オシムさんからの学びを伝える 指導者向けクリニックを開催

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2024/05/22 15:00

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「指導者は声のかけ方ひとつで選手を成長させられる。技術だけでなく人間力も伸ばせるんです」。JAPANIZE FOOTBALL発起人の佐藤勇人さんがそんな想いをこめた、指導者向けのイベントを開催しました。

 

 

【オシムさん逝去から2年 教えをつなぐために】

「日本サッカーの日本化」を目指すプロジェクト JAPANIZE FOOTBALLは、2024年5月、サッカーの指導者を対象にクリニックイベントを開催しました。

 

イビチャ・オシムさんが亡くなられて2年が経つ中、オシムさんからの教えをつないでいこうと、プロジェクトの発起人である佐藤勇人さんやアンバサダーの羽生直剛さんが中心となって企画しました。協力いただいたジェフユナイテッド市原・千葉さんのクラブハウスであるユナイテッドパークを会場に、小学生や社会人などさまざまなカテゴリーの選手たちを教える約20人の指導者が参加しました。

 

イベントはトークセッションと練習法を学ぶ実践パートの二部構成で、勇人さん羽生さんのほか、オシムさんを日本に招いた元ジェフGMの祖母井秀隆さんや、ジェフの育成年代を担当する工藤浩平さん、市原充喜さん、現在は企業に勤めながら社会人チームを指導する竹田忠嗣さんに協力をいただきました。

 

イベントの冒頭で、佐藤さんが指導者の方に向けたイベントを開催した想いを伝えました。

 

 

「僕自身は直接指導をする立場ではありませんが、指導者は選手一人ひとりをしっかり見て声をかけていくことで選手を成長させることができる。戦術や技術を伸ばすだけでなく、人間力を伸ばすことができる、難しいけれどとても重要なお仕事だと思っています」

 

 

【 「答えは教えない」 オシム流の指導を伝える トークセッション】

イベント前半はトークセッション。佐藤さん、羽生さん、祖母井さんが登壇し、参加者から事前にもらった質問やその場で出た質問に対し、オシムさんとのエピソードも交えながら答えました。いくつかの質問と回答をご紹介します。

 

質問

子どもたちに対して、どんな言葉選び、コミュニケーションを心掛けたらいいですか?

 

祖母井さん

「何か答えを教えるような指導は危険だと思います。日本であれ海外であれ、この先どうなるかわからない(社会)です。だからこそ『俺はこういう経験をしたから、こうしろ』というような言い方はしません。そこはとてもデリケートです。まだ少数派なのかもしれないけれど、指導者が子どもと一緒に何かを見つけていくような感覚を身に着けていきたいですね」

 

 

羽生さん

「たしかに、オシムさんって僕らに『こうしろ、ああしろ』っていう言い方は絶対しなかった。オシムさんの中には無限に選択肢があったとしても、いくつかを投げかけて僕らに聞いてくる。『崩し方はいくつかあるけど、お前らで考えろ』って。あと、口調は怖いところがあったけど、いいプレーをしたらどんな選手に対しても『ブラボー』って言ってくれたんですよね」

 

勇人さん

「オシムさんのブラボーって、選手にとって分かりやすかったですね。それをもらえた時は、これでよかったんだなと感じられる。指導者の方はそんな武器になる言葉を持てたらいいですね」

 

 

質問

チームの中にも選手や子どもたちそれぞれの価値観があると思いますが、ひとつの方向に持っていくにはどうしたらよいですか。

 

勇人さん

「きっとひとつの方向に持っていかなくていいんじゃないかと思います。オシムさんってそういう接し方をしていなかった。ふだんのトレーニングから重ねていた中で、自然とオシムさんが求めるような方向に近づいたんだと思います」

 

羽生さん

「僕らはプロのクラブだから勝つという目的があって、それに向かっていくという意味では分かりやすかったです。ただ、一般の社会だと、いわゆるミッションやビジョンみたいなものがないと難しいこともあると思います。認識は揃えられるといいと思います」

 

 

祖母井さん

「プロと青少年ではそもそも違うから区別していかないといけない。方向性を揃えることは大事だけど、子どものうちにそれをするのは危険だとも思う。ある大人一人の考え方に同調してしまうかもしれない。いちばん大事なのは人生であって、スポーツを通して人生を学んでいる。そこを大人が勘違いしていないかというのは気になります」

 

 

【オシムチルドレン考案の練習で“混乱”を体験】

後半は練習を体験する実践パートです。オシムさんが実際に行った練習をベースに、指導者たちが持ち帰ることができるエッセンスを込めたメニューを勇人さん、羽生さん、そしてジェフでオシムさんの通訳を務め、現在はJFL ヴィアティン三重の監督である間瀬秀一さんと開発しました。

 

 

実践パートに入る前に、間瀬さんから参加者へのビデオメッセージを投影しました。

 

間瀬さんからのメッセージ

「羽生と勇人と当時を振り返ってトレーニングメニューを考えました。オシムさんは空の上から見ていると思います。足が止まったら『走れ』って怒ると思います。楽しみながらも一生懸命頑張ってください」

 

練習メニューの一部もご紹介します。

 

メニューの途中にどんどんルールを変更して、常にカオス(混乱)をつくることがテーマです。

 

ウォーミングアップとして手を使ったボール回しを実施。5対5でシュートはヘディングに限定したうえで、互いにゴールをねらいます。ボールを持って動くのは禁止というルールのもと、ボールを持っていない参加者はパスコースを作るために先を読んで動きます。

 

すると、突然のルール変更。ボールを持って動けるけれど、パスは自分より後ろにしか出せないラグビーと同じルールに。参加者が混乱しながらも必死にパスをつないでシュートまで持ち込むと、指導役の勇人さんからも思わず「ブラボー!」の声があがりました。

 

 

オシムさんの代名詞でもあった色とりどりのビブスを使ったメニューも行いました。

 

5人組でそれぞれ異なる色のビブスを身につけたうえでパス回し。パスを出せる相手は特定の色に限定します。例えば赤ビブスの人は黄色ビブスの人にだけ、オレンジビブスの人は紫ビブスの人だけパスできる、といった具合です。

 

しかし、ここでも目まぐるしくルールが変わります。パスを出せる色を急に変更、足で蹴るのではなくハンドパスとヘディングに限定、ボールを奪う“オニ”の追加、タッチ数の限定。参加者は「えーっと、誰にパス出すんだっけ?」と混乱しながらも、メンバーの色を呼んだりしてコミュニケーションをとって練習を体験していきました。

 

 

勇人さんや羽生さんは「パスを出す次の次のプレーヤーの動きを意識して!」とか、「オニの動きを予測して!」など、考えて走るサッカーにつなげるためのアドバイスを伝えていました。

 

息を切らしながら、頭を混乱させながらも、参加者たちの間には笑顔が生まれていました。

 

 

【価値観をアップデートする体験】

イベント終了後にいただいた、参加者の声も紹介します。多くの参加者に満足していただけたようでした。

 

「トークのパートで指導とは何かを考えたうえで、実際にボールに触る練習の時間があり、とても満足しました」

 

「オシムさんから指導を受けたメンバーから引き継ぐように練習を体験でき、頭を混乱させながらもためになりました」

 

「日本サッカーの日本化という答えのないテーマに対して、佐藤勇人さんたちの考えを知れたよい機会でした。自分自身の価値観をアップデートする貴重な体験になりました」

 

JAPANIZE FOOTBALLでは今回実施したような指導者の方を対象としたイベントを、今後も内容を更新しながら実施していく予定です。興味を持ってくださった方はぜひ、次回参加をご検討ください。

 

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