監督であり先生 オシムさんへの想い チルドレン座談会【後編】

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2025/10/17 17:34

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JAPANIZE FOOTBALLアンバサダーに加えて、オシムジェフでプレーした立石智紀さん、山岸智さん、工藤浩平さん、水野晃樹さんが集まった座談会。サッカーにとどまらない人生に影響を与えた秘話、亡くなったオシムさんへの想い、本音を語りました。(2024年1月に収録)

 

 

【サッカーは人生】

 

羽生)

サッカーのプレーに限らず、印象に残っている言葉ってある?

 

工藤)

ぼくは「サッカーも人生も一緒」という言葉を覚えていますね。

 

「サッカーはビジネスだけどエンターテインメント、楽しまなきゃいけないし、見に来る人を楽しませなければいけない」みたいなことを言ってもらいました。

 

自分自身、サッカーを楽しむタイプなんで、サッカーはサポーター、観客を楽しませるためにあるものだっていうのは、そうだなーって思いました。

 

羽生)

勝ち点取るなら守ってカウンターでもいいけど、やっぱり自分たちで攻撃を作り上げていかないといけないよねって、それこそ、そういう人生のほうが豊かだなって話だよね。

 

勇人)

それ覚えてるわ。

 

守って勝ち点取るのは簡単かもしれないけど、攻撃的にリスクを冒して、興行をつくるのが難しい、家も一緒だろっていってたね。

 

 

家を壊すのは簡単だけど、つくるのはたいへんだろ、サッカーもいっしょだろって。

 

山岸)

それはめちゃくちゃ印象的だったな。

 

 

【監督であり先生】

 

羽生)

オシムさんって、選手と監督という関係ではあったけど、どんな人だって感じていた?

 

俺は教師であり、威厳のある親父みたいに感じていた。

 

オシムさん自身も監督と言われるよりも教師と言われたいって、どこかで読んだような気がする。

 

一人ひとりの長所を見ながら、この選手たちが成長するためにとか、この選手たちにタイトル取らせるにはどうするかをずっと考えている先生であり、威厳はあるけど、子どもを愛する親みたいなイメージ。

 

立石)

俺も先生みたいなイメージが強い。

 

この人の言う事を聞いていれば間違った方向には行かないみたいな、謎の安心感があった。

 

羽生)

めっちゃ怒られて腹立つんですけど、やれば結果出るからなって思いますもんね。

 

工藤)

僕はあんまり表立って意見を言うタイプではないんですよ。

 

でもオシムさんは自分の意見とか考えを尊重してくれて、もっといいアイディア、こんなことも教えてくれるよって親とか、お兄ちゃんみたいな。

 

否定もしないし、尊重しすぎないというか、もっとこういう世界もある、もっとできるって教えてくれる人でしたね。

 

そういう指導者であり、そういう社会人になりたいなって思います。

 

羽生)

たしかに、めちゃくちゃサッカーを知っていたということかもしれないけど、コンビネーションの練習でも、例えばこういうのもあるじゃんって教えてくれて、そのうえで、ほかにもっとあるからお前らも考えろって余白を残してくれていた。

 

それはすごいなって思う。

 

勇人も何かある?

 

勇人)

導いてくれる人だったなって思う。

 

サッカー選手としてもそうだし、自分の人生対してもそうだった。

 

オシムさんは僕が調子に乗りやすいタイプだって分かってたと思うから気を引き締めてくれるし、チャンスでミスした時は、直接は言わないけどメディア通してかばってくれた。

 

一回も褒められたことなくて、なんで自分を使ってくれるのか分からなかったけど、亡くなる直前にインタビューした時、「お前のプレーが本当に好きだった」って何回も言ってもらえて、その時にやっとわかったような気がして。

 

導いてくれる人だった。

 

 

【人を信じた】

 

山岸)

俺はオシムさんが来る前のシーズンはほとんど試合に絡んでなかった。

 

オシムさんが監督になって、初出場初スタメンみたいな感じだったけど、緊張で頭が真っ白になって、前半15分くらいで横パス取られて失点した。

 

 

ふつうの監督だと間違いなく交代していたような内容だったけどそのまま使ってくれて、後半頭から信頼してピッチに送り出してくれた。

 

結局、自分はフル出場して、最後は点をとって、開幕戦も勝てたのは自分のサッカー人生の中でめちゃくちゃ大きかった。

 

人を信じることがすごいなって個人的には思った。

 

この人のために自分がもっと何かをしたいって思わせてくれた、最初で最後の恩師かなって思う。

 

オシムさんなくしては、自分のサッカー人生はないくらいな気がしている。

 

勇人)

その初出場の件を聞いたことがあって、やまの性格を理解して、守ったみたい。

 

他のコーチが山岸を交代したほうがいいんじゃないかって言った時、オシムさんは「なんで変える必要がある?」って言ったらしい。

 

「山岸は強気な性格だから、自分がミスしたって分かっていて、後半やり返してやろうって思っている」と。

 

羽生)

強気なところが良いって言ってたから、そこで交代しちゃったら、良さが失われると思ったんだろうね。

 

それこそ、山岸のこれからの人生どうなるんだよくらいのことまで言ってたと思うよ。

 

羽生)

晃樹は?

 

水野)

俺はプロになって初めての監督だったんだけど、調子良くて結果出したあとにオシムさんが「今日はお前はメディア対応をするな」って言って。

 

日本のメディアは過剰に持ち上げて若手を潰すからって、自分のことを守ってくれた。

 

 

そう考えると、やっぱり監督でもあり、先生のようでもあったかな。

 

羽生)

ほかのサッカー選手に、一番いい監督って誰だったって聞くと、みんな「いやー、分からない」って言うんだよね。1人くらいいるもんでしょって思ってたけど、みんな意外といないんだよね。

 

俺はあんなすごい監督、上司って後にも先にもオシムさんしかいなかったって思う。

 

あの人のすごさをサッカー界もそうだし、一般の社会にも伝えていくことが大事だって、引退してから年月が経つと、よけいにそう思う。

 

オシムさんにしかなかった感覚を少しでも伝えていきたいから、みんなこれからも協力してください!

 

 

<座談会に参加いただいた皆さんのプロフィール>

佐藤勇人さん

JAPANIZE FOOTBALL 発起人/ジェフユナイテッド市原・千葉 CUO

ジェフの下部組織出身でジェフや京都サンガF.C.でプレー。2000年にプロ契約をするとオシムさんに見出され主力として活躍し、ジェフでクラブとして初のタイトルを獲得。通算546試合に出場。

羽生直剛さん

JAPANIZE FOOTBALL アンバサダー/Ambition22 代表

ジェフやFC東京などでプレー。オシムさんのもとで「水を運ぶ人」と評される動きで、所属クラブや日本代表の中盤で活躍。引退後、FC東京のスカウトを経て、自身が代表を務める会社Ambition22を設立。

立石智紀さん

ジェフユナイテッド市原・千葉 アカデミー GKコーチ

Jリーグが開幕した1993年にジェフでデビューし、キャリア16年。オシム監督就任以降に出場機会を増やし、チームが初めてタイトルを手にした2005年のJリーグカップではMVPを獲得。引退後、ジェフの育成年代のコーチを務める。

山岸智さん

レガーレFC広島 育成ダイレクター

ジェフのユース出身で、主にMFとして活躍。オシム監督が就任した2003年にJ1初出場を記録し、その後日本代表にも選出。サンフレッチェ広島など複数のチームで、18年間に渡りプレーした。現在は広島県を拠点にサッカーの普及・育成に取り組む。

工藤浩平さん

ジェフユナイテッド市原・千葉 アカデミー コーチ

ジェフのジュニアユース、ユース出身で、オシム監督のもとでプレー。京都サンガF.C.やサンフレッチェ広島などでプレーし、日本代表にも選出。2023年栃木シティで引退。現在は小学生の年代への指導を担当。

水野晃樹さん

いわてグルージャ盛岡 GM

高校卒業後、オシム監督率いるジェフにてデビューし、日本代表にも選出された。スコットランド セルティックでプレーした後、日本国内の複数のチームでプレーし2024年現役引退。最後の所属チームであるグルージャにてGMに就任し、チームの強化を担う。

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